投資家情報/経営戦略

1. 経営戦略策定の背景

当社は、資本の毀損、資金の調達不安や人材不足等の問題を解決するとともに、抜本的な再建が必要と判断し、2020年1月に産業競争力強化法に基づく特定認証紛争解決手続き(いわゆる事業再生ADR手続き)の申請を行いました。その後、同年4月に事業再生ADR手続きが成立し、再生の道を進むこととなり現在に至っております。
この間、新型コロナウイルス感染症拡大および資源価格高による原材料価格の高騰などの外的要因に対し、不採算製品の見直しや製造原価等の合理化および削減を着実に進め、2020年度(第94期)および2021年度(第95期)において事業再生計画を上回る収益の改善を果たすことができました。
しかしながら、当社の事業を取り巻く環境は非常に速いスピードで変化しており、市場・顧客が求める基準も日々変化する状況にあります。また、地球温暖化抑止に向けた脱炭素化の推進は、あらゆる産業分野において喫緊の課題となっております。当社ではESGを経営のコアに据え、より確かな成長を実現するために成長戦略の見直しを行うこととし、新たに当社グループの中期経営計画「KCI2025」を策定致しました。

2. 新経営戦略概要

環境問題への取組みにおいて、GHG排出量の削減、リデュース、リユース、リサイクルの取組みやバイオマスプラスチックの利用なども含め、開発・設計段階から環境負荷の低減を前提とし、サプライチェーン全体の中でサステナビリティ実現への役割を果たすことが求められていることから、当社はESGテーマへの対応を経営のコアに据え、今後の成長につなげていく方針としています。
この方針を基に、事業環境の変化が加速する中、社会が求める新たな価値観に対応していくために、当社のビジネスモデルを変革する必要があり、これまでの単純加工型ビジネスから高付加価値への提供へ、下請的受託から先行提案へ、そしてお客様にとってのなくてはならない存在へ。私たちは、お客様による社会価値の実現に資するモノづくりで、自らの企業価値を高めながら、社会に必要不可欠とされる企業を目指し、その礎を「中期経営計画 KCI2025」の4年間で確実に築き上げていきます。

なお、中期経営計画の呼称である「KCI」は、児玉化学工業株式会社の英文略称であると同時に、「Key Supplier」 「Change」 「Impact」の3要素において追い求めるテーマを示しています。すなわち「顧客にとってなくてはならない存在となるための提案・体制」 「環境変化への柔軟な対応と、組織・文化のさらなる変革」 「顧客・社会・自社へ、目に見える影響(インパクト)を与えることの3つを方針に実行していきます。

3. 中期経営計画 KCI2025の骨子

① 事業の目指す姿

従来の経営理念、経営ビジョンに加え、本計画の策定にあたり、10年先を見据えて長期的に当社が目指すべき姿を位置付けました。今後10年、凄まじいスピードでの市場変化が見込まれる中で、環境課題からカーボンニュートラル達成に向けた脱炭素、省エネの取組みが重要となり、製品ライフサイクルでのCO2削減取組みが求められます。一方、モビリティ業界を例に取れば、CASEの進行とともに自動運転技術等が格段に進展しており、それによって安全基準も含めた既存の基準の考え方も見直されてくると考えられます。その結果として、車両各部位の素材がEVなどで要求される走行効率向上の特性を充足する素材に見直されていくことが考えられます。
このような市場変化の中で、軽量かつ剛性で、さらにはリサイクル可能な製品の需要が急激に高まってくると確信しております。この需要の高まりに対して、当社では、従来のプラスチック製品に加え、プラスチックと、ガラス繊維やカーボンファイバー、天然素材、バイオマス材といった多様な素材を融合した複合材製品の成形技術を確立し市場に提供することで、常に市場を牽引しながらその存在を高めていきたいと考えております。

事業の目指す姿

② 成長戦略の基本方針(対象とする市場・顧客層と技術・製品のマトリックス)

既存市場、顧客層については、当社の得意技術とする大物成形や高速射出成形製品、また差別化技術であるTOM工法の加飾製品を中心にさらなる市場への浸透を図っていきます。また、モビリティ領域におけるボディ系鋼材部品代替としてのGMT工法製品の拡販や、真空大物成形技術を活かした植物工場向け水耕栽培トレーなどの拡販を図ってまいります。
一方で、新規市場・顧客層については、新規導入しました新複合材成形設備で可能となる高精度の軽量・剛性製品や断熱・吸音効果の高い製品を、環境課題起因の脱炭素・省エネで需要の高まる全市場に製品を投入して拡大を図ります。また、当社の特徴的な技術であるTOM工法に機能性の高い撥水・撥油性フィルムや透過型フィルをかけ合わせることで、生活水回り領域の防水・防薬材製品、移動体やIT領域の各センサー内蔵製品への進出を図ります。同様にGMT工法や高速射出成形においては、環境エネルギーや医療・衛材などの市場領域に向け、技術面での優位性とコスト競争力を高めることで市場開拓を図ってまいります。

成長戦略の基本方針

③ 成長戦略における各セグメントの主要施策(各セグメント名を改称し市場・顧客を拡張)

モビリティ事業(従来の自動車部品事業)

  • 商圏エリアの拡張現在関東圏が中心である商圏エリアを、その他の潜在的需要が見込まれる地域へ拡大
  • 新規顧客の開拓環境対応などの価値の高い提案を推進
  • 新規部位への参入内外装部品以外の、車内の快適性を高める防音・遮熱技術を必要とするインシュレーターなどの将来需要が見込まれる製品を複合材成形技術の活用により開発

リビングスペース事業(従来の住宅設備事業を改称)

  • 新規顧客の拡大 生活利便性の高い価値ある提案を推進
  • 新領域製品の拡大 リフォーム需要や新生活常態で求められるプロダクト領域へ参入
  • オリジナル製品への参入近年市場が拡大している水回りを中心としたオプション品(バス用品等)を独自開発し市場参入を推進

アドバンスド&エッセンシャル事業(従来のアドバンスドマーケット事業を改称)

  • 新複合材製品の拡大新複合材成形技術を駆使し、高度化するIT製品やエネルギー・インフラ市場へ参入拡大
  • 医療・介護市場への参入拡大高齢化や感染症の拡大により多様な製品需要が拡張する医療・介護・衛生市場へ参入拡大
  • 新環境対応製品の拡大社会環境変化で新生活常態から拡がる需要、(例)こだわり家電、植物工場などでの拡大

④ 成長戦略に伴う各セグメントの利益改善施策

モビリティ事業

  • 自働化、省人化、DX化によるローコストオペレーションの徹底(他事業へも展開)
  • 大型プロジェクト受注に伴う生産体制の見直し等による合理化
  • 内外装製品以外の新規部位参入による付加価値の向上

リビングスペース事業

  • 新規プロダクトカテゴリー拡張での機能的付加価値の向上
  • 独自開発によるオリジナル製品での付加価値向上
  • 多品種部品のアッセンブリ工程における最適工程設計での効率化推進

アドバンスド&エッセンシャル事業

  • 軽量、剛性、高精度が要求される、付加価値の高い新複合材製品の導入拡大
  • 従来のTOM工法による加飾技術を応用し、付加価値の高い機能的製品に拡張
  • GMT工法、真空成形工法でのコスト改善による、製品領域の拡大とその付加価値向上

4. 業績目標

2022年度(第96期) 業績目標
連結 売上高 158億円
営業利益 8.0億円
2025年度(第99期) 業績目標
連結 売上高 225億円
営業利益 22.5億円

KCI2025 連結業績目標の内訳(億円)

業績目標
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